2015年9月25日金曜日

メッカ巡礼の悲劇

昨日に大変ショッキングなニュースが世界を駆け巡りました。
サウジアラビアで毎年行われているメッカ巡礼で、群集雪崩によって多数の死傷者が出たようです。

実は今回死者が出たミナという場所に、私は2010年に行ったことがあります。サウジ政府の招待で、メッカ巡礼時の混雑緩和について検討する会議に呼ばれました。そこで関係者にいろいろとアドバイスをしまして、今回の死者が出た場所周辺についての危険性についても議論しました。

実は過去にも何百人と亡くなる事故も起こっており、サウジ政府は安全安心なメッカ巡礼を目指して、これまで様々な取り組みを行ってきました。特に最近はカーバ神殿の周囲を2階建てにして容量を増やすなど、インフラ整備が進んでいたのに残念ながらまた悲劇が起きてしまいました。

私は2010年の訪問以来、実はサウジとはコンタクトがとれなくなりました。 それは例の「アラブの春」の運動で、私がお付き合いさせて頂いていた関係者が一気にいなくなったからです。アラブ諸国は、トップが変わればそれまでの契約は一切無効になり、その後いろいろと共同研究したかったのですが、残念ながらその道は閉ざされてしまい、今に至っています。

その後は世界中からいろいろなコンサルが入り、 群集マネジメントについてアドバイスをしていたと聞いています。ただ、やはり宗教心で高揚した群集の統制は難しく、今回はミナ付近の歩道の交差点で容量オーバーになったようです。人は人口密度が約4人/m2を超えると動けなくなり、止まってしまいます。その後次々と人が四方八方からやってくると、動けない人の周辺の圧力が高まり、大変危険な状態になります。メッカの巡礼は高齢者が多く、ある意味で災害弱者です。高圧力に耐えられるはずもなく、そこで例えば気を失って倒れると、そこが真空地帯のようになって周囲から人がなだれ込んでしまいます。これが群集雪崩です。

サウジ政府は、各交差点付近にはモニタカメラを設置しており、それを監視ルームで常にチェックしていました。2010年当時でも、歩道を歩く人の密度は常に監視されていて、危険があれば群集の動きを止めたり、そもそも宿泊場所から巡礼に出発する時間をずらしたりしていました。さらに群集の動きをシミュレーションするソフトなども活用されていました。

それでもなぜこのような事故が起こってしまったのか、どうして予知できなかったのか、それは今後の検証を待たないと分かりません。

ただ言えることは、現在の群集の動きを予想するソフトウエアは、こういったメッカ巡礼などの問題に対して、あまり役に立たない、ということです。高齢者が集団になって高揚して歩いている、というヒューマンファクターをシミュレーションソフトウエアに入れるのは極めて難しいのです。したがってそのソフトで予想した動きが現実と合わないのはある意味当然です。人の集団運動をより精密に予測したければ、心理学やジェロントロジーなど、様々な分野の知見を総動員しなければならないでしょう。

サウジ側は、「多くの巡礼者が所定の行程表を尊重しなかった」のが原因と発表しているそうです。これもヒューマンファクターを考慮した上で計画を立てるのは難しい、ということに関連しています。

さらに今回の悲劇で私が感じたのは、こうした群集行動の予測の問題以前に、現場での監視・連絡体制がどうなっていたのか、ということです。一部報道によれば、異なる2つのグループが交差点で衝突した、という記事がありましたが、それならば衝突前にビデオカメラによる目視で予想できたはずです。それが現場の警備に生かされなかった原因についても何か分かれば考察していきたいと思います。

日本も2020年に東京オリンピックを迎えます。このような群集雪崩の悲劇は絶対に起こしてはいけません。そのためにもますます研究を加速していきたいと思います。




















2015年9月3日木曜日

やっぱり

半年に一回になってますね、、、笑

さて、そうしている間もいろいろと応援メッセージを頂き
ありがとうございました。
こちらは相変わらず貧乏暇なしで忙しくしております。
大学の教授は、企業でいえば営業、人事、会計、研究開発、経営
すべて一人でやっていて、ヒマなんて全くありません。

さらに最近は余計な仕事が沢山増えて、かつ従来の仕事が
なくならないため、理論的に絶対に渋滞してしまいます。
それでも何とか工夫して効率よく仕事をこなしているつもりです。

研究については、いま人工知能のシンギュラリティ問題に興味を
持っています。さらに自動運転は可能か、とか、オリンピックでの
渋滞にも関心があります。
いろいろとお話したい話題がたくさんあるのですが、またの機会に!
(ということは、また半年後か;;;)











2015年3月9日月曜日

理系の本!

皆様、またまた半年以上が空いてしまいました、、、
半年ごとに更新するとすると、次は秋か、、

さて、告知です。東京の神保町にある本屋さん「書泉グランデ」に先日
行ってきました。
 何と、、4階に私の本と、私が推薦する数学関連の本などをたくさん置いて
います!どれもお勧めなので、手にとって頂けると嬉しいです。

その時に写真をパチリ! 4月の始めまでやってます。

2014年8月4日月曜日

半年に一度

更新の頻度が半年に一度、、、これはひどいですね、、、
もうこのブログも閉じるかもしれませんが、とりあえず残しておきましょうか。

一般向けに発信するのは、ひどく誤解される可能性もあるので勇気が要る
ことです。その誤解を私なりに分析した「誤解学」を新潮選書より最近出版しました。
誤解で悩んでいる方に読んで頂きたいと思っています。


2014年2月27日木曜日

超ひさしぶり

長らく更新が止まっていました、、、
4月からは忙しさも減る予定で、いろいろと研究に専念できそうです。
考えたいテーマがたくさんあって、一人ではどうにもなりません。
渋滞学を研究してみたい人、集まれ~

2013年5月4日土曜日

ゆとり

GW第2弾のブログです。
久々にゆとりがあると、こういう活動ができます。ゆとりは大切ですね。
しかも、おかげでいい発想がひらめいて、論文ネタが二つできました。
やはり私は理論家だと実感します。紙と鉛筆だけで半日ダラダラと思考を
遊ばせておくと、いいアイディアが出てきます。
こういう試行錯誤の時間、大事にしたいのですが、今年は学内で重要な
役職についてしまい、なかなか落ち着けません。教授がしなくてもいいような
雑用までやっている感じがします。これも改革していきたいと思います。



2013年5月3日金曜日

電子メール

連休ですね。皆さん、連休前に「締め切りは連休明け」という電子メールを出すのは辞めましょうね(笑)。
いま、いろいろな調査や作文の依頼のメールが殺到していて、その締切がすべて連休後です。ということは、、、連休中に仕事をして下さい、という意味でしょうか。
とんでもありません。私は連休中は仕事しませんよ、、、といいつつ、エクセルファイルを埋めている私、、、なんて真面目なんでしょう。

電子メールの登場で、なんて便利な世の中になったのか、と思ったのは25年前、今は、こんなもの早く無くなればいい、と思うことの方がはるかに多いです。人間の処理スピードをはるかに超えた仕事量が毎日降ってきます。いつかはこのメールを中心とした仕事のありかたは確実に破たんするでしょう。