昨日に大変ショッキングなニュースが世界を駆け巡りました。
サウジアラビアで毎年行われているメッカ巡礼で、群集雪崩によって多数の死傷者が出たようです。
実は今回死者が出たミナという場所に、私は2010年に行ったことがあります。サウジ政府の招待で、メッカ巡礼時の混雑緩和について検討する会議に呼ばれました。そこで関係者にいろいろとアドバイスをしまして、今回の死者が出た場所周辺についての危険性についても議論しました。
実は過去にも何百人と亡くなる事故も起こっており、サウジ政府は安全安心なメッカ巡礼を目指して、これまで様々な取り組みを行ってきました。特に最近はカーバ神殿の周囲を2階建てにして容量を増やすなど、インフラ整備が進んでいたのに残念ながらまた悲劇が起きてしまいました。
私は2010年の訪問以来、実はサウジとはコンタクトがとれなくなりました。 それは例の「アラブの春」の運動で、私がお付き合いさせて頂いていた関係者が一気にいなくなったからです。アラブ諸国は、トップが変わればそれまでの契約は一切無効になり、その後いろいろと共同研究したかったのですが、残念ながらその道は閉ざされてしまい、今に至っています。
その後は世界中からいろいろなコンサルが入り、 群集マネジメントについてアドバイスをしていたと聞いています。ただ、やはり宗教心で高揚した群集の統制は難しく、今回はミナ付近の歩道の交差点で容量オーバーになったようです。人は人口密度が約4人/m2を超えると動けなくなり、止まってしまいます。その後次々と人が四方八方からやってくると、動けない人の周辺の圧力が高まり、大変危険な状態になります。メッカの巡礼は高齢者が多く、ある意味で災害弱者です。高圧力に耐えられるはずもなく、そこで例えば気を失って倒れると、そこが真空地帯のようになって周囲から人がなだれ込んでしまいます。これが群集雪崩です。
サウジ政府は、各交差点付近にはモニタカメラを設置しており、それを監視ルームで常にチェックしていました。2010年当時でも、歩道を歩く人の密度は常に監視されていて、危険があれば群集の動きを止めたり、そもそも宿泊場所から巡礼に出発する時間をずらしたりしていました。さらに群集の動きをシミュレーションするソフトなども活用されていました。
それでもなぜこのような事故が起こってしまったのか、どうして予知できなかったのか、それは今後の検証を待たないと分かりません。
ただ言えることは、現在の群集の動きを予想するソフトウエアは、こういったメッカ巡礼などの問題に対して、あまり役に立たない、ということです。高齢者が集団になって高揚して歩いている、というヒューマンファクターをシミュレーションソフトウエアに入れるのは極めて難しいのです。したがってそのソフトで予想した動きが現実と合わないのはある意味当然です。人の集団運動をより精密に予測したければ、心理学やジェロントロジーなど、様々な分野の知見を総動員しなければならないでしょう。
サウジ側は、「多くの巡礼者が所定の行程表を尊重しなかった」のが原因と発表しているそうです。これもヒューマンファクターを考慮した上で計画を立てるのは難しい、ということに関連しています。
さらに今回の悲劇で私が感じたのは、こうした群集行動の予測の問題以前に、現場での監視・連絡体制がどうなっていたのか、ということです。一部報道によれば、異なる2つのグループが交差点で衝突した、という記事がありましたが、それならば衝突前にビデオカメラによる目視で予想できたはずです。それが現場の警備に生かされなかった原因についても何か分かれば考察していきたいと思います。
日本も2020年に東京オリンピックを迎えます。このような群集雪崩の悲劇は絶対に起こしてはいけません。そのためにもますます研究を加速していきたいと思います。
サウジアラビアで毎年行われているメッカ巡礼で、群集雪崩によって多数の死傷者が出たようです。
実は今回死者が出たミナという場所に、私は2010年に行ったことがあります。サウジ政府の招待で、メッカ巡礼時の混雑緩和について検討する会議に呼ばれました。そこで関係者にいろいろとアドバイスをしまして、今回の死者が出た場所周辺についての危険性についても議論しました。
実は過去にも何百人と亡くなる事故も起こっており、サウジ政府は安全安心なメッカ巡礼を目指して、これまで様々な取り組みを行ってきました。特に最近はカーバ神殿の周囲を2階建てにして容量を増やすなど、インフラ整備が進んでいたのに残念ながらまた悲劇が起きてしまいました。
私は2010年の訪問以来、実はサウジとはコンタクトがとれなくなりました。 それは例の「アラブの春」の運動で、私がお付き合いさせて頂いていた関係者が一気にいなくなったからです。アラブ諸国は、トップが変わればそれまでの契約は一切無効になり、その後いろいろと共同研究したかったのですが、残念ながらその道は閉ざされてしまい、今に至っています。
その後は世界中からいろいろなコンサルが入り、 群集マネジメントについてアドバイスをしていたと聞いています。ただ、やはり宗教心で高揚した群集の統制は難しく、今回はミナ付近の歩道の交差点で容量オーバーになったようです。人は人口密度が約4人/m2を超えると動けなくなり、止まってしまいます。その後次々と人が四方八方からやってくると、動けない人の周辺の圧力が高まり、大変危険な状態になります。メッカの巡礼は高齢者が多く、ある意味で災害弱者です。高圧力に耐えられるはずもなく、そこで例えば気を失って倒れると、そこが真空地帯のようになって周囲から人がなだれ込んでしまいます。これが群集雪崩です。
サウジ政府は、各交差点付近にはモニタカメラを設置しており、それを監視ルームで常にチェックしていました。2010年当時でも、歩道を歩く人の密度は常に監視されていて、危険があれば群集の動きを止めたり、そもそも宿泊場所から巡礼に出発する時間をずらしたりしていました。さらに群集の動きをシミュレーションするソフトなども活用されていました。
それでもなぜこのような事故が起こってしまったのか、どうして予知できなかったのか、それは今後の検証を待たないと分かりません。
ただ言えることは、現在の群集の動きを予想するソフトウエアは、こういったメッカ巡礼などの問題に対して、あまり役に立たない、ということです。高齢者が集団になって高揚して歩いている、というヒューマンファクターをシミュレーションソフトウエアに入れるのは極めて難しいのです。したがってそのソフトで予想した動きが現実と合わないのはある意味当然です。人の集団運動をより精密に予測したければ、心理学やジェロントロジーなど、様々な分野の知見を総動員しなければならないでしょう。
サウジ側は、「多くの巡礼者が所定の行程表を尊重しなかった」のが原因と発表しているそうです。これもヒューマンファクターを考慮した上で計画を立てるのは難しい、ということに関連しています。
さらに今回の悲劇で私が感じたのは、こうした群集行動の予測の問題以前に、現場での監視・連絡体制がどうなっていたのか、ということです。一部報道によれば、異なる2つのグループが交差点で衝突した、という記事がありましたが、それならば衝突前にビデオカメラによる目視で予想できたはずです。それが現場の警備に生かされなかった原因についても何か分かれば考察していきたいと思います。
日本も2020年に東京オリンピックを迎えます。このような群集雪崩の悲劇は絶対に起こしてはいけません。そのためにもますます研究を加速していきたいと思います。